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2009.01.08 (Thu)

【ハルヨシとアキ】

 その後は二人でこの地域の歴史や神話などに関する書物を漁っていったが、どれもこれといった当たりは無く、結局閉館時間の午後五時まで粘っても見つからなかった。
 夏休みではあったがお互い塾の夏期講習があるので、次の雨の日までと別れを告げて、アキは帰っていった。
 夕日が頭だけを出して建物に隠れようとしている。夕日に目を細めながら、疲れのために大きくため息をついた。
 図書館の前に残されたおれはそのまま突っ立っていても仕方が無いので、駐輪場から自分の自転車を引っ張り出してまたがった。そしてサドルに腰掛けながらおばあちゃんから聞いたアヴルの話についてずっと考えていた。おれが聞いた話、アキが聞いた話。相違点は二つ。おれの話では光の玉は盗まれたとされる部分がアキが聞いた話では単になくなったとされている点。これはいく通りにも解釈できるけれど、決定的に違うのはこの光の玉が割れたかどうかだった。おれの話では盗んだ男が落として割れ、粉々に砕け散ったけれど、アキの話では女が光の玉を社に返したという。割れたものをわざわざ拾い集めて社に帰しに行ったといえば納得できなくもないけれど、どうも腑に落ちない。
 気付けば日は沈み、気の早い鈴虫たちが夜風を震わしていた。ストッパーを蹴り上げて、ゆっくりと自転車のペダルに体重をかけていく。
 物事の始まりはいつもゆっくりとしたもので、そして次第に速度を増し、いつの間にかブレーキも踏めなくなってからそれに気付くものだ。涼風を切って走り出したおれの自転車は、軽やかに斜面を滑って行った。
14:31  |  アヴルの手をとって。  |  TB(0)  |  CM(1)  |  EDIT  |  Top↑

★No title

『物事の始まりはいつもゆっくりとしたもので、そして次第に速度を増し、いつの間にかブレーキも踏めなくなってからそれに気付くものだ』
いいですねぇ。なんか俺崖に向かって転がってそうだ。
テンチョー |  2009年01月08日(木) 18:42 | URL 【コメント編集】

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